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アルバムレビュー 『Act Your Age』 Gordon Goodwin's Big Phat Band

 ブログと言っても何を書いたらいいのかトンとわからないので、とりあえずジャズアルバムのレビューをする。初めて書くので勝手がわからないが、文章を書く練習のためにも挑戦してみる。

 

 まずは日本人にとってもすごく聴きやすいと思われる、アメリカ産のビッグバンドアルバムを紹介していこうと思う。

Gordon Goodwin's Big Phat Band 『Act Your Age』

 

Act Your Age

Act Your Age

 

1. Hit the Ground Running

これでもかと見せ所を詰め込んだエイトビートナンバー。テーマからTuttiまで一糸乱れぬ演奏をやりきるのはさすがといったところ。縦の線が完全にそろってると本当に気持ちがいい。アルトサックスソロはEric Marienthalで、最後まで聴かせてくれる。同時に、バックで躍動しているエレキベースも聴いていて気持ちがいい。8ビートナンバーは低音部だけ聴いていても楽しいところが素晴らしい。ライブ版もあって、そっちの方がもっとノリノリでやっているから好き。

2. Watermelon Man

ハービー・ハンコックの有名なナンバーであるWatermelon Manをビッグバンドアレンジ。4ビートにアレンジするのは意外と珍しい気がする。原曲通りのファンクでやるイメージが強い。もちろん、4ビートだからと言ってカッコ悪いかというと全然そんなことはなく、Tuttiもあるし転調もあるし、Gordon Goodwinのピアノソロは聴いていて小気味良いしで、非常にシンプルなメロディーとコード進行であるにも関わらず、飽きさせない作りになっている。

3. September

Earth Wind and Fireの有名なナンバー。恐らく誰もが一度はCMなり映画なりなんなりで聴いたことがあるはず。ヴォーカルはPatti Austinで、どっちかというと綺麗な歌い方なんだけど、アレンジ自体がややスムーズ寄りだから、違和感をさほど覚えない。もっと泥臭いSeptemberの方が良い、という人にとっては、ギターソロの後の間奏も含めて、物足りないかもしれないが、これはこれで一つの形。当然のごとく転調も入れて盛り上げていきます。

4. Yesterdays

Jerome Kernによって、ミュージカル「Roberta」のために作曲されたナンバーをビッグバンドアレンジ。1930年代に作られた曲で、いかにもブロードウェイ黄金期な曲。アレンジも豪華な雰囲気を醸し出している。ピアノはArt Tatumで、曲を通してひたすら暴れまくるのには圧巻。だというのに雰囲気を壊さないその塩梅は、一聴の価値あり。

5. Senor Mouse

まさかのChick Coreaが参加。Chick Coreaのナンバーはビッグバンドになってもかっこいい。原曲はGary Burtonとデュオで演奏しており、スパニッシュな雰囲気というか、Retrun to Foreverな雰囲気というか、いかにもChick Coreaらしいメロディなのだが、Gordon Goodwinと合体することで、抽象的な言い方になってしまうが、アメリカンな軽くて聴きやすいサウンドになっている。これも最初から最後までChick Coreaが引きっぱなし。バンドとChick Coreaの掛け合いも途中で挟まることで、緊張感が続く。コンテンポラリービッグバンドの入門としておすすめしたいところ。

6. Punta Del Soul

今度はDave Grusinが参戦。スムーズ色が強いビッグバンドナンバー。テーマを聴くたびにSmoke on the Waterが思い出されてしまうのは私だけだろうか。曲の構造自体はオーソドックスなもので、次何が来るか予想しやすいし、テーマの繰り返しも多い。これだけだとマンネリに感じるのではないかと思われるかもしれないが、決してそんなことはなく、バックに注目したら新しい発見を何度もできる。

7. Act Your Age

表題にもなっているGordon Goodwinによるナンバー。ここからは全部Gordon Goodwinによる作曲となっている。やたらと16分音符を重ねたり裏打ちが多かったりと、ミディアムな8ビートナンバーでもGoodwin節は健在。Eric Marienthalのソロもあるが、一曲目のHit the Ground Runningの方が華やかだし分かりやすいため、曲として地味な印象は否めない。

8. Chance Encounters

ここに来てやっと一休みできるミディアム4ビートナンバーがくるとでも思ったか。Goodwinのソプラノサックスソロは、相変わらず次何が来るか予想しにくい。ソロ開けのフルートソリも、バックのベースとセットで聴くと怪しい雰囲気を醸し出してきて一筋縄ではいかない。ソリ後のバンドプレイも焦点がなんだか合っていない。不協和音っぽいこともやったりと、安定しきれないナンバーを終えると爽やかな世界が。

9. Backrow Politics

名前から察せられるように、後ろのトランペット隊がすっごいがんばる曲だよ!ソロも全員で回すよ!Wayne Burgeron先生からBob Summers先生までみんなのソロが聴けるよ!サックスもピッコロやフルートに持ち替えて目立つように見えるが、その後に指回しからハイノートまで取り揃えているトランペットソリが待ち受けているから結局徒労に過ぎないのだ。そう、前にいる奴らは飾りでしかない。さて、ここで曲自体について述べると、語弊を恐れずに敢えて言えば、非常に頭が悪い曲。カートゥーンっぽい、と言うべきなのか。だが、それが悪い訳では決してない。

10. East Cost Envy

さっきより成長して中学生か高校生くらいになったようなミディアムナンバー。8ビートと4ビートを行き来する中でテナーサックスとトロンボーンがバトルソロを行う。その後はサックスソリがありのバンドプレイがありのでなんともベタな展開だが、これにわくわくしない聴き手がいるのだろうか。

11. El Macho Muchacho

名前からも分かるようにラテンナンバーだが、フュージョン要素は強め。フレーズはGoodwinのナンバーを聴きまくっていると既視感のあるものが多いが、ギターソロ、テナーサックスソロ終わりからのビルドアップ、そしてエンディングが近づいていることがはっきりと分かる曲作りが上手いからなんだか許せちゃう。

12. Gumbo Street

一曲の中に色々詰め込んてみました、というラストナンバー。なので一言で表現するのは難しいのだが、少なくとも聴きにくいラインを超えない範囲で遊んでいる点は聴いていて面白いと感じているし、このアルバムの中では一番好きなナンバーではある。ただ、終わり方はあっさりとしすぎな気がした。